2011年秋から2013年春にかけて、海外学振とサバティカルを利用して留学させていただいてました。ありがとうございます。あまりにも有難いので、研究成果以外にも何か世の中に還元できないかと思い、これを始めました。…という大きな目標を持ってはいますが、自分の頭を整理するためと、寂しさを紛らわすために書いてる部分が多いです。ごめんなさい。「その他の話」「セミナー聴講」「英語チラ裏」は、見聞きしたことの備忘録です。

【2016年夏 追記】
ここは僕が北里に勤めていた頃に作ったホームページの名残です。転職してからここのページの更新はしていませんでした。しかし、2016年秋からまた留学(長期出張)させていただけることになったので、それに関してはここに追記したいと思います。上の副題は、壮行会の時にうちのボスが言い放った臨床病理のモットーです。

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 その他のお話  

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ウンコ・インフォマティクス  

Volatile organic compounds from feces and their potential for gastrointestinal disease diagnoses.
FASEB J. 2007 Feb 21; [Epub ahead of print]

消化器疾患の患者や現場の関係者達は、『患者のうんこって、なにか特別な匂いがするな・・』と実感しているらしい。これをうまく数値化できれば、消化器疾患の早期診断ができるかもしれない。既に、うんこの匂いというのは揮発性有機化合物(VOCs)のカクテルであることは知られている。しかし、うんこ中VOCsの具体的な成分についてはよく分かっていない。そこでこの論文では、うんこの匂いを網羅的に解析し、消化器疾患との関係を調べた。

【手法】
・自由摂食している健常者30名x2、Campylobacter jejuni感染性腸炎31名、Clostridium difficile感染性腸炎22名、原因菌不明大腸炎18名を対象に実験した。
・対象者から2〜4 gのうんこを採取して、ガスクロ(SPME GC/MS)にかけた。

【結果】
・約300種類のうんこ中VOCsを同定した。
・これらのVOCsは、その代謝経路から、13種類に大別することができる。
・44種類のVOCsは対象者の80%で共通だった。
・約30種類のVOCsについて、健常者2群と腸炎患者3群との間に有意差がみられた。
・この約30種類のVOCsを2軸に分けて、2次元の『うんこ匂い判別式』として表すと、(1)健常者(2)CJ感染者(3)CD感染者(4)原因不明大腸炎者をそれぞれクラスターに分類することができた。

 近い将来、消化器感染症の非侵襲的な早期診断法としてうんこ臭が採用される日が来るのだろうか。うんこ・インフォマティクス。 同様に、ウシのゲップから弟一胃発酵の状態をモニターできないか。ゲップ・インフォマティクス。

  • 2010.12.04 Saturday
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亀頭の存在価値 
The human penis as a semen displacement device
Gallup GG, Burch RL, Zappieri ML, Parvez RA, Stockwell ML, Davis JA
Evolution and Human Behavior 24(4):277-289, 2003.
 
 カワトンボのオスの交尾器には、剛毛と呼ばれる毛が生えている。交尾の際、カワトンボの雄は交尾器を激しくピストン運動することによって、メスの貯精嚢から、先に交尾したオスの精子を掻きだすことが知られている。本論文は、ヒトの亀頭にも、精液掻き出し機能があることを示唆した。

 実験1)人工精液を満たした人工膣に、亀頭の高さの違う3種類の人工陰茎を様々な速度でピストン運動をしたところ、亀頭の高い人工陰茎について、深く速くピストンしたときに有意に精液が人工膣から掻き出された。
 実験2)ニューヨーク大学の大学生男女合わせて369人に性の経験についてアンケート調査したところ、女性に不倫の疑惑が生じたとき、およびパートナーとの会えない期間が数週間生じたときに、通常時より深く速くピストンするという結果が得られた。
 以上より、ヒトの陰茎の形状および性行動が、Sperm competitionの長い歴史の中で獲得された重要な形質であることが示唆された。
 
 論文中で、女性らしき人の手で人工膣がささえられ、男性の手が人工陰茎をピストンさせている実験風景の写真が紹介されている。ヒトの亀頭が精液を掻き出すという仮説はあちこちでよく聞かれるが、実際に実験として論文にまで仕上げたのは(あほらしくて誰もやってなかったので)これが初めてとのことである。ちなみに、Web of Scienceによれば、 この雑誌はIF=2.8もある雑誌で、この論文自体も、既に10回引用されている。
 
 マテメソで「3種類のphallusは『California Exotic Novelties』より購入した」とあるが、サイトにいってみると、かなりまじめに取り組んでいる大人のおもちゃの会社だった。リンクを貼るのはさすがにためらわれた。
  • 2010.12.05 Sunday
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過食ラットの糞 
Anorexigenic effect of fecal extract from ventromedial hypothalamic (VMH) lesioned rats on normal rats.
Indian J Exp Biol. 1995 Feb;33(2):101-4.

【実験】
1)VMH(満腹中枢)除去肥満ラットを用意する。
2)(1)のうんこを遠心して上清とって滅菌する。
3)セファデックスG-150カラムで(2)の280 nmの分画をとる。
4)うんこエキスを絶食した通常ラットに腹腔投与する。
5)普通のラットのうんこエキスを投与しても何も起きないが、肥満ラットのうんこエキスを投与したラットは摂食量が有意に抑制された。

 この論文では、機序につながる実験はない。考察では、過食が腸内フローラの変化を引き起こし、なんらかの摂食抑制物質が作られるのかもしれないと述べられている。
  • 2010.12.09 Thursday
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肥満は伝染るか 
An obesity-associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest.
Nature. 2006 Dec 21;444(7122):1009-10.

【実験】
1)ob/obマウスとそのwild type の腸フローラを比べると、バクテロイデスと発酵菌が増殖して、これらの菌のの相対数度が異なる。
2)ob/obマウスの腸内フローラを別の動物に移植した場合、wild type のものを移植した場合よりも太った。
3)よって、腸内フローラが肥満の発現に大きな影響を与えることが示唆された。

ob/obマウスを用いてはいるが、先の論文と同じく、過食動物を作って、対照群との腸内細菌の違いについて調べている。この論文では、過食による細菌叢の変化が、吸収効率の上昇を引き起こし、過食者はさらに太るという結論に達している。2)の結果をみると、『肥満はウツる』ということもできる。先の論文と一見矛盾するようにみえる。

しかし、これは抽出物と細菌叢の移植との差によるものではないだろうか。つまり、過食時において、細菌叢は高エネルギー環境を効率的に利用できるように増殖を繰り返すが、そうした増殖細菌叢の代謝産物や分泌物は細菌の増殖を抑えるのではないだろうか。あたかも負のフィードバックのように。

gut.JPG
  • 2010.12.16 Thursday
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家畜の自慰   
獣医繁殖学第2版(文永堂)124-5ページ

行動の様相は動物種により異なる。こうした行動が起きる原因として、遺伝的要因、内分泌および神経系の異常、不適当な飼養管理などが考えられる。

【雄ウシ】背をアーチ状に曲げて、腰の前後運動によって陰茎を下腹部と包皮内で数回刺激後に陰茎を激しく突き出し、射精する。早朝に多くみられ、珍しくない。
【雄ウマ】腰を下げて、勃起した陰茎を腹部に数回こすり付けて射精する。
【雄ブタ】床や壁面に腹を押しつけ、勃起した陰茎を圧迫する。あまり例をみない。
【雄ヤギ】尿を自分の頭や頚にかけながら、勃起した陰茎を口にくわえる。しばしばある。

【感想】ヤギすごい。
  • 2010.12.19 Sunday
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はじめに    

有難いことに、来年度の海外学振の内定をいただきました。年額500万ちょいが支給されるそうです。学振から届いた書類によると、そのお金は「滞在費・研究活動費」とかかれておりました。

おなじ学振でも特別研究員DCのときは、給与と研究費がはっきりと別になっていたので、どういうことかよくわからず、学振に電話して聞いてみたところ、「文字通りである」とのことでした。ん?つまり、このいただいたお金は、公的にも私的にも自由に割り振って使ってよいということですね? こんなお金のもらい方したことないのでびっくりしました。

「こいつは・・・しめしめ」という気持ちも湧かなかったわけではありませんが、それ以上に「これは大変なお金をもらってしまった。ただでは帰ってこれない。必ず充実した成果を挙げてこなければ」という強い使命感が私に芽生えました。

もとはといえば税金や学費だったものをいただいて行く訳ですから、研究成果や教育指導として社会にお返しするのは当然として、それ以外にも、留学に関連して起きた事や考えたことを、ここに書き留めることで、せめてもの恩返しになれば幸いです。

あとは自分のためです。ひとりで留学して、さみしくなってしまいそうなので。

  • 2010.12.22 Wednesday
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何しに行くのか 
むかしは、生命科学の最新技術はほとんどが外国発祥だった。だから、日本の生命科学者が最新の技術や器材に触れるには、外国に実際に行って、これを体得して持ち帰るしかなかったのだろう。

しかし今は多くのメーカーはグローバルで、最新の技術や器材も大抵のものは日本でも手に入る。特別な抗体や動物などにしても、共同実験という形で輸入したりできる。うちのラボにはない技術を使いたい場合は、委託するという手だってある。そうすると、ほとんどの研究は留学しなくたってできるはずである。じゃあ何しに留学にいくのか。

うちのボスに聞いたところ、「サイエンスは文化なんだよ。外国人、特にアメリカ人は、研究を理論立てて組み立て、ひとつのストーリーに纏め上げるということが圧倒的にうまい。これは日本にはもともとない文化なので、留学してトレーニングを受けなければできるようにならない。」と言われた。

僕はトップジャーナルに出したことなくて、研究者として一皮むけるにはどうすればいいのか悩んでいるところだったので、おお、では留学でこの停滞から抜け出せるのかもしれない、と思い、そう言ってみると、「いや、トップジャーナルがどうとかそういうのじゃなくて、もっと根本的なことだよ」と言われた。残念ながら、僕はまだピンとこない。

でも、その文化というのを見たいと思った。
  • 2010.12.26 Sunday
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犬の妊娠中PRL  
In vivo investigation of luteal function in dogs: effects of cabergoline, a dopamine agonist, and prolactin on progesterone secretion during mid-pregnancy and -diestrus.
Domest Anim Endocrinol. 1997 Jan;14(1):25-38.

イヌの黄体期中期以降、および妊娠中期以降において、プロラクチンは主要な黄体刺激ホルモンである。妊娠の有無は関係ない。その作用は、プロジェステロンの産生を促進するというよりも、黄体の寿命を延ばすことにある。

妊娠中期もしくは黄体期中期(LHサージから30日後)のビッチに2日間ドパミンアゴニストを投与すると、血中プロラクチン濃度が下がると共に、プロジェステロン濃度が基底レベルまで下がる。投薬をやめたあとは回復する(!)。流産はしていないみたい。
  • 2010.12.30 Thursday
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いつ行くのか  
留学について決めかねたまま、北里に勤めて4年がたってしまった。大学の規定では3年勤めればサバティカルの権利を得ることになっているが、ボスとは今の研究を論文にしてからにしようねと言っていて、まだこなせていない。だから留学はまだ先の話だなあと思っていた。

そんなとき、僕にとっての海外学振の応募は、年齢制限で今年までであることを知った。海外学振、狭き門とは聞いていたけど、せめて応募だけでもしてみたかった。それは、院生時代、学振の特別研究員に通った時の気持ちが忘れられないからである。思うように結果を出せず、「僕など研究者の器ではないのかもしれない…」と鬱々としていた時に、「いいよ、援助してやるから、しばらく続けてみろよ」と社会に言ってもらえたような気がしたあの時の気持ち。

ボスに無理にお願いして、論文は出発までにはなんとかすると約束し、海外学振に応募させてもらうことになった。
  • 2011.01.02 Sunday
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小学生論文執筆 
Blackawton PS, Airzee S, Allen A, Baker S, Berrow A, Blair C, Churchill M, Coles J, Cumming RF, Fraquelli L, Hackford C, Hinton Mellor A, Hutchcroft M, Ireland B, Jewsbury D, Littlejohns A, Littlejohns GM, Lotto M, McKeown J, O'Toole A, Richards H, Robbins-Davey L, Roblyn S, Rodwell-Lynn H, Schenck D, Springer J, Wishy A, Rodwell-Lynn T, Strudwick D, Lotto RB.
Biol Lett. 2010 Dec 22. [Epub ahead of print]

イギリスの小学生が書いた論文が Biology letters (IF=3.521)に掲載された。

 2011年1月4日読売新聞:「執筆者は、英デボン州にあるブラックオートン小学校の8〜10歳の児童25人。科学の授業の一環でマルハナバチを飼育。ハチがどうやって蜜のある花を見つけるのか調べようと、様々な色のライトを表示できる箱を使い、ハチを観察した。黄色いライトの真ん中にある青いライトや、逆に青いライトに囲まれた黄色いライトに、砂糖水を仕込んでハチの行動を調べたところ、ハチは砂糖水がなくても真ん中のライトに飛んでいくようになった」

 当たり前だけどちゃんと所属が小学校になってる。Figは色鉛筆で色が塗られていたり、ヘタな字で凡例が書かれていたりして、超かわいい。

    

 でもファーストがブラックオートン小学校のブラックオートン君ということは御曹司? コレスポはちゃんとUniversity College Londonの先生だし、邪推してしまう。すこし読んでみると、イロモノ的要素もあるように感じた。
  • 2011.01.06 Thursday
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